カテゴリ:Children's books( 8 )   

【チョコレート工場のひみつ】ロアルド・ダール   

2005年 09月 25日

a0002942_1120560.jpg現在上映中の映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作。
じつはまだ映画はまだ見ていないが、最近原作を知人から借りて懐かしく読んだ。私のように幼い頃に読んで、題名だけなんとなく覚えている人もいるのではないだろうか。

「チョコレート」。
この菓子の名前を聞いて、どんなイメージを浮かべるだろう。私などは近頃、仕事の疲れとりのイメージしかないのだが、単なる菓子というくらいのごくあっさりしたものだ。
しかし、子供にとっての「チョコレート」はまったく違う。チョコレートという単価百数十円くらいのカカオマスの菓子に、すばらしいファンタジーがぎっしり詰まっているのだ。子供の頃、チョコレートの単語にひかれて本書を手に取ったという人も多い。

チョコレート好きな主人公チャーリーの近所には、誰一人出入りしない世界中のチョコレートを製造する不思議な工場がある。ある日工場経営者のワンカ氏は、この不思議な工場に世界で5人の子供を招待すると発表、世界中に売り出されたチョコレートの中に、5枚の招待券が入っているという。世界中の人々は、この不思議な工場見学招待券を誰が手に入れるのかと大騒ぎになる。
一方、チャーリーは貧しい家の子供。祖父母が父方母方あわせて4人が、ひとつのベッドで寝たきり。父母は家計を支えるために朝から晩まで働いて、1つのベッドしか入らない小さなあばら屋を維持している生活だ。そんなチャーリーがどうやってチョコレートが買えたのかという突っ込みはさておき、工場見学前の導入部から、読者はチョコレートという甘さと夢をもつ菓子に魔法をかけられる。
このような菓子が印象的な児童書というと、「ヘンデルとグレーテル」の魔女のおばあさんのお菓子の家だが、この話に比べると導入部のチョコレート工場までの誘導が素晴らしい。時代的にも我々の感覚にあうという理由もあるが。
残念ながら「大どろぼうホッツェンプロッツ」のように色彩の豊かさまではたどり着かなかったが、幼少の頃の感覚を呼び覚ます、素晴らしい物語である。

総合評価★★★★☆(★5が最高)

■書籍情報
チョコレート工場の秘密
[PR]

by cafe_europa | 2005-09-25 11:24 | Children's books

【月の森に、カミよ眠れ】上橋菜穂子   

2004年 06月 20日

a0002942_223152.jpg月の森の蛇神を愛し一生を森で送ったホウズキノヒメ。その息子である蛇神のタヤタに愛されながらも神との契りを素直に受け入れられない娘キシメ。神と人、自然と文明との関わり合いを描く。91年刊の再刊(「MARC」データベースより)

「守り人」シリーズで知られる上橋菜穂子氏の初期の作品。
古代日本を舞台に大和朝廷の力が九州の南にも及び、縄文文化がやがて歴史のうねりに飲み込まれて行く様を大蛇神と巫女との婚礼を題材に、色濃く描かれている。モチーフとされる豊後大神氏の出自伝説の「あかぎれタヤタ」伝説は、多弥太とも大太とも表記され「平家物語」や「大神氏系図」にも取り上げられており、数ある大蛇伝説の中でも有名なものだろう。
夜な夜な娘の元へやってくる不思議な夫。やがて懐妊した娘はやって来るときは姿が見え、帰る時には姿が見えない夫の正体を探ろうと夫の襟に緒環を通した針を刺し、夫が帰った後を追って行く。針は嫗岳(祖母山)の洞窟で苦しむ大蛇の喉に刺さっていた。やがて大蛇は息を引き取り、娘はやがて大蛇の子を出産する。(あかぎれタヤタ伝説)

本書ではタヤタ伝説を元に、太古の自然や古きもの、神聖なものが時代に押し流され、人々との繋がりを断ち切る様を美しく描いている。人が決して触れてはならない禁断の地「かなめの沼」の場面が印象的だ。
<夜の闇よりもなお暗く、はてしない闇。それでいて、その闇の中には数知れぬ光の渦が、ぼうっとホタル火色に脈うちながら、らせんになってまわっているのです。(本文抜粋)>
この美しい生命の螺旋を引き裂く冷たい「鉄」。物語の始まりから終わりまで、常に感じる喪失感が切なく哀しい。

総合評価★★★☆☆(★5が最高)

■参考
九州の山と伝説
平気物語と惟栄

■書籍情報
月の森に、カミよ眠れ
[PR]

by cafe_europa | 2004-06-20 22:33 | Children's books

【大どろぼうホッツェンプロッツ】オトフリート・プロイスラー   

2004年 05月 30日

a0002942_151652.jpgおばあさんの大事なコーヒー挽きが盗まれた。相手は新聞を賑わせている大どろぼうホッツェンプロッツ。少年カスパールとゼッペルはどろぼうを追って魔法使い相手に大奮闘━━━━

本書を初めて読んだのはかなり小さい頃だ。内容は大人になって読み直すまでほとんど思い出せなかったが、色彩や、食べ物の描き方が印象的だった。大人の目で読み直しても、今なお子供の視点が作る生き生きとした躍動感は健在で大人をもぐいぐいひきつける力強さだ。
どろぼうや魔法使いを出し抜いてやろうと知恵をひねる様子や、物語を彩る数々の食物(たかが食物だが、この「食」の要素も3巻まで続く物語を作り上げる重要な要素である)、魔法やまじない、小物などもドイツの民話的な要素を多分に含んでおり、素朴でちょっとぶっきらぼう、しかし優しげなドイツの片田舎の風情がとてもいい。
ホッツェンプロッツが持つ小道具もユーモアがある。見かけ倒しの7本の短刀に、こしょうピストルの武装。少年ゼッペルはこしょうピストルの弾を顔の真ん中に受け、<顔じゅう、ひかきむしられるような、やきつくようなかんじで、目がひりひりとしみ>(本文抜粋)大どろぼうに攫われてしまうのだ。

子供向けの児童書であるが、読者をひきつけてやまないテンポある文章や鮮やかさは、最近の児童書ではめったにお目にかかれない完成度である。特に原書の文章のリズム感はとてもよいと噂で聞いたので、ドイツ語になじみのある方は原書で入るのもいいだろう。
本書は続編として【大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる】【大どろぼうホッツェンプロッツみたびあらわる】がある。続編も第一作目に劣らず、素晴らしい出来映えだ。

総合評価★★★★★(★5が最高)

■書籍情報
大どろぼうホッツェンプロッツ
大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる
大どろぼうホッツェンプロッツみたびあらわる
[PR]

by cafe_europa | 2004-05-30 15:15 | Children's books

【ネシャン・サーガ/ヨナタンと伝説の杖】ラルフ・イーザヴ   

2004年 03月 25日

a0002942_11929.jpgネシャン北域の森で、少年は謎めいた杖を発見する。青い光を発する杖を握ると、五感はとぎすまされ、記憶や感情を伝える力まで強まるようだ。これは涙の地ネシャンを解き放つ伝説の杖ハシェベトなのか?エンデが見いだした本格ファンタジー作家が放つ少年たちの地の果てへの旅。(「BOOK」データベースより)

ネシャン・サーガは【ヨナタンと伝説の杖】【第七代裁き司の謎】【裁き司最後の戦い】と続く3部作のファンタジーである。ファンタジーというと、ファンタジーの舞台となる世界へ主人公が移動して冒険するもの(例えば【ナルニアものがたり】【ハリー・ポッター】)、もしくはファンタジーの世界のみが語られる場合(【指輪物語】【神の守り人】)に分かれるが、ネシャン・サーガの一風変わったところは現実世界とファンタジー世界にそれぞれの主人公がおり、使命の為に命で繋がっている「もうひとりの自分」なのだ。物語の始めはよく似た二人の主人公ジョナサンとヨナタン、交互に世界が切り替わるので慣れないとちょっととまどうかもしれない。どちらも夢の中で、もう一つの世界の兄弟を見ているのだが、あるきっかけで片方の世界にあった笛がもうひとつの世界に移動したことから、二人はどうやらただの夢ではないことを悟る。

物語はキーアイテムとしてのハシェベトの杖と杖に課せられた使命をもとに、世界の解放、楽園世界への移行を目指して流れていくが、読んでいるとどこかで読んだような既視感を強く覚える。【ナルニアものがたり】【指輪物語】あたりの王道ファンタジーを読まれた方はお分かりかと思うが、これらの名作をなぞって話が構成されているのだ。残念ながら新しさも創造も全く感じられず、名作を模倣した優等生の秀作という仕上がりだ。ただし、優等生だけあって資料の下調べや、文章の緻密さは立派なものであるが。
加えて物語はキリスト教条的世界観として氏の創造の筆が運ばれているわけだが、これがかなり説教臭い。希薄な宗教観、他宗教の読者にかなりおせっかいなでしゃばりさで語ってきて、うるさい感じを受ける。キリスト教条的ファンタジーであるから物語は愛と友情の物語だが、おなじ題材でも 【ライラの冒険シリーズ】のレベルを考えるとやはりどれをとっても今ひとつという観がぬぐえない。帯のコピーなどではエンデの名前まで担ぎだして煽っているようだが、いかがなものかと思うが。

総合評価★★☆☆☆(★5が最高)

■書籍情報
ネシャン・サーガ/ヨナタンと伝説の杖
ネシャン・サーガ/第七代裁き司の謎
ネシャン・サーガ/裁き司最後の戦い
[PR]

by cafe_europa | 2004-03-25 11:08 | Children's books

【アルテミス・ファウル/妖精の身の代金】オーエン・コルファー   

2004年 03月 08日

a0002942_03056.jpg伝説的な犯罪一家に育った12歳の天才少年・アルテミスは、コンピュータを駆使して「妖精の書」を解読、巨万の富を得ようとする。しかし、妖精たたちはハイテクで武装した集団だった! 世界的ベストセラーの翻訳。(「MARC」データベースより)

映画化決定で急に近頃浮上してきたオーエン・コルファー 。悪のハリ・ポタと言われるが、なにがハリ・ポタかよくわからないあおり文句である。
主人公のアルテミスは伝統的な犯罪一族の当主であり 、若干14歳のシニカルで切れ味鋭い天才少年 。副題のように妖精を誘拐して身の代金をとるのだが 、この妖精がまた人間以上にハイテクという設定が 非常に面白い 。
ハイテク技術と悪知恵くらべのようなかんじである 。
もう少しキャラクターなどに細かいひねった描写があるとよかった 。

総合評価★★★☆☆ (★5が最高)

■書籍情報
アルテミス・ファウル/妖精の身の代金
[PR]

by cafe_europa | 2004-03-08 00:30 | Children's books

【ストラヴァガンザ/仮面の都】メアリ・ホフマン   

2004年 03月 07日

a0002942_15251.jpgロンドンで脳腫瘍の治療を受けているルシアンは、手にした手帳で16世紀のベネツィアへ時空を超える。ローマ帝国以前、ロムルスとレムス兄弟が争っていた頃、ロムルスが勝利してローマに都を築いたのが我々の世界であるが、ルシアンが旅した先はレムスが勝利した世界であり、ここから平行世界が分たれ、ベネツィアとよく似ているが少しずつ違うベレッツァが誕生したのだ。女公主ドゥチェッサを戴くベレッツァでは大魔法使いが時空を旅する人、ストラヴァガンザとなったルシアンを待っていた…
3部作の第一部。


視覚的で、ベネツィアングラスのようにキラキラと美しい物語。ファンタジーとしても面白いが、ベネツィアの平行世界、ベレッツァへの憧れを強く抱いてしまう。金より銀が尊ばれており、建築にもふんだんに錆びない不思議な銀が使われ、16歳以上の女性は全員仮面をつける。女公主直属のマンドリエーレ(こちらではゴンドリエーレ)と暗殺者、ベレッツァを狙うキミチー一族に科学者と呼ばれる魔法使い。

しかし、話の筋としては子供があちらの世界へ冒険するという、よくある話の組み立てだ。仮面の都は1作目にあたるが、すでにこの段階で現実世界で主人公は死に、完全にあちらへ舞台が移動してしまっているところが、多少今後の展開に気がそそられるくらい。話の深みには少々欠けるが、視覚的な輝きが評価されている物語だろう。

総合評価★★★☆☆(★5が最高)

■書籍情報
ストラヴァガンザ/仮面の都
[PR]

by cafe_europa | 2004-03-07 14:53 | Children's books

【レイチェルと滅びの呪文】クリフ・マクニッシュ   

2004年 02月 09日

a0002942_16242.jpg遠い昔、追放された邪悪な魔女が支配する星、イスレア。ここでは原生の生物は絶え、魔女の作り出した生き物とさらわれた子供達しか存在せず、降る雪の色さえも魔女の与えた灰色を纏っている。主人公レイチェルと弟は家の地下室の壁から現れた巨大な黒い手によって、イスレアへ吸い込まれる。イスレアでは魔女ドラヴェナが、自らの後継者を待っていた。後継者の手を借りて魔女の為の檻、イスレアを脱出し、地球に帰還して復讐を果たす為に。そしてイスレアには伝説の詩があった。奇跡の子が地球よりやってきて、さらわれた人々を解放するという・・・
レイチェル3部作・第1部


法の設定というか、表現の仕方に個性がある。1部では魔法は洗脳に焦点が置かれており、ハリ・ポタやその他の魔法とは一線を画している。しかもその魔法はイスレアにあって始めて顕現されるように物語に制限がかかっている。
著者が愛娘の「悪い魔法使いが出てくるお話」というリクエストで語るうちに出来た話というが、本の帯のコピーにもあるように、児童書としてはかなりグロテスクな表現もあり、大人が読むには物足りないが、子供も楽しめるかはちょっと微妙。ちょっと趣向を変えた児童書を読みたい人には、いいかもしれない。

総合評価★★☆☆☆(★5個が最高)

■書籍情報
レイチェルと滅びの呪文
[PR]

by cafe_europa | 2004-02-09 09:27 | Children's books

【バーティミアス/サマルカンドの秘宝】ジョナサン・スラウド   

2004年 02月 08日

a0002942_16516.jpg舞台は英国ロンドン。上流階級の魔術師と、庶民の魔法を使えない「一般人」が住む世界。魔術師は貧しい一般人から弟子をとり、子供達は幼い頃から親も自らの名も捨て、帝国貢献の為に魔術の修得に勤しんでいる。
魔法使い見習いのナサニエルは、負けず嫌いでプライドの高い少年。ある日、少年は師匠に隠れて、上級ではないがベテランの妖霊(ジン)バーティミアスを召還。目的は自分に恥辱を与えた、エリート魔術師サイモン・ラブレースが密かに所持する、サマルカンドのアミュレットを盗むこと。盗みに成功した後、ナサニエルとバーティミアスは、アミュレットの出所を調べる内に師匠は殺害され、大事件へと発展していく。
3部作の内の第1部。


目を引くのが、主人公ナサニエルと妖霊バーティミアスの対比。無鉄砲で野心家、プライドの高さが鼻につく少年と、シニカルだがどこか憎めない、5000歳を越えるベテラン妖霊のやりとりが物語に躍動感を与えている。
物語は何度か視点を切り替えているが、時々バーティミアスの視点で読者に語りかけており、召還されて渋々つきあいつつも、どこかナサニエルを気に入りつつある様子が伝わって面白い。文中にある注釈も、全て登場人物バーティミアスの注釈によるもので、物語に入り込みやすくなっている。

映画化が決定し、ハリー・ポッターの対抗馬と言われているようだが、少々疑問。魔法使い見習いの成長という点は確かに共通項だが、物語の種類自体が違うといおうか。ハリー・ポッターも好きだが、あえて言えばハリー・ポッターが肌に合わなかった人に読んで欲しい本。

総合評価★★★★☆(★5個が最高)

■書籍情報
バーティミアス/サマルカンドの秘宝
[PR]

by cafe_europa | 2004-02-08 17:33 | Children's books