カテゴリ:Fantsy( 15 )   

【アバラット】クライヴ・バーカー   

2004年 05月 04日

a0002942_292.jpg世界一退屈な町、ミネソタのチキンタウンに住むキャンディ・カッケンブッシュ。酒浸りの父と疲れた母、狭量で偏屈なヒステリー教師、抑圧された日々を送る少女はある日、町はずれの草原へと誘われる。そこで出会ったのは八つの頭を持つ不思議な男、ジョン・ミスチーフ。彼は悪党シェイプが来る前に、灯台に登って灯を入れるよう少女に頼む。海などみたことがない人もいるミネソタで、少女はさびれた建物に登り、転がっていた球を小鉢に投げ込んだ。瞬間、草原に怒濤の海が押し寄せた。母なる大洋イザベラ海である。キャンディは冒険の海へと飛び込んだー
【アバラット】4部作のうちの第一部。


25の島々が集う多島海、それが「血の本」シリーズのクライヴ・バーカーの描く架空の世界「アバラット」である。ホラー作家であるだけにちょっとグロテスクな表現も少なくないのが個人的にちょっと気になるが、それが逆に物語に厚みを与えているのではないだろうか。
脳から抽出した悪夢に顔を浸した「真夜中の島」の王、1つの体に8つ兄弟の顔を持つ盗賊、5つの帽子を重ねた黄色いスーツの魔法使い、海のないミネソタのまんなかにあるさびれた灯台、亡霊がひしめく島、歓楽の不夜城、海の底に眠る悪夢の生物、そして謎に満ちた「神秘と夢の島」25時の島…

本書の魅力は巻末の補遺『クレップ年鑑』抜粋にもあるとおり、物語の設定が圧巻。世界の風景、人物、生き物、世界設定すべてが創造性あふれ、読者の感性を刺激するモチーフばかり。そして多数の骨太でダイナミックな著者自身の挿絵が、物語を更に彩り鮮やかにうつしている。100点以上の大量の挿絵から物語が産まれたというから、「挿絵」ひとつとっても物語の文章以上の存在感である。
結構なお値段のするハードカバーの本であるが、この絵だけでも買う価値はあるだろう。

物語の書き出しがいい。不思議な女達「ファントマヤ三姉妹」が不気味な嵐の夜、舟で海原にでるところからはじまる。
「誰かが嵐を差し向けたのよ」
三姉妹のひとりジョウファイが必死で舟を操りながら言う。彼女達の目的はただひとつ。アバラットの希望の使命とはなにか。
このプロローグだけで、4部作へと続く大作への期待が裏切られないのはまちがいない。ディズニーが映画化を決定したというが、これだけの作品をどんな映画に仕上げるのか気になるところだ。

総合評価★★★★★(★5が最高)

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アバラット
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by cafe_europa | 2004-05-04 02:08 | Fantsy

【黒いユニコーン】テリー・ブルックス   

2004年 05月 01日

a0002942_54952.jpgデパートの広告に売り出されていた〈魔法の王国ランドオーヴァー〉。中年弁護士ベンはその王国を買い取り、艱難辛苦の果てに王座についた。現代社会での生活を捨て、異世界に生きて早1年。ようやく王としての風格が板につき始めたある日、ベンは、かつての同僚が災厄に見舞われている夢を見た。同時に魔術師のクエスターと妖精のウィロウもまたそれぞれ"失われた魔術書"と"黒いユニコーン"の夢を見たという。3つの夢の真意を探るため、ベンは現実世界へ、そしてクエスターとウィロウはランドオーヴァーの何処かへと探索の旅に出るが…。(「BOOK」データベースより)

【魔法の王国売ります!】から始まるランドオーヴァーシリーズ2作目。主人公のベンは、魔法の王国の玉座を売ったミークスの陰謀により王の座を追われる。目くらましの魔法により、誰もランドオーヴァー王のベンと分からない。彼の正体が分かるのは妖精界の生き物、プリズム猫や、仇敵の魔女と竜だけ。自分の姿もアイデンティティも全て剥ぎ取られた主人公は、川面に映った別人の姿を見て恐怖に襲われる。
「王さま、それはきみが、きみ自身を失いだしたからさ」
謎のプリズム猫は更に言う。
「きみの着けている仮面が、きみになりかかっているんだ!」

【裏庭】と同じように、本書も自分探しの旅だ。真実とは、自分とは常にいろんな姿や形で目の前に表れる。覆われたままの目では常に惑わされ、たどり着くことが決してないが、真実の片鱗をしっかり捕らえてあるがままの自分を知る機会は、惑わされる数と同じだけやってくるのだ。

総合評価★★★☆☆(★5が最高)

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黒いユニコーン
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by cafe_europa | 2004-05-01 05:49 | Fantsy

【ライラエル/氷の迷宮・古王国記2】ガース・ニクス   

2004年 05月 01日

a0002942_31038.jpg【サブリエル/冥界の扉】から14年後。大死霊を封じて災いは去ったと思いきや、各地で死霊の事件が多発し、王とアブホーセンは各地を飛び回っている。この事件の裏には古王国だけではなく、アンセルスティエールまで根ざした影の陰謀がありそうだという。古い邪悪な力が目覚めようとしている。
氷河の下にあるチャーター五聖賢の血筋のひとつ、クレア一族の町では一人の少女ライラエルが死ぬ程の絶望感を味わっていた。一族の先天的な能力<先視の力>が十四歳の誕生日を迎えた今日も未だに授からないと。死を覚悟したライラエルはある日、千年以上前から予言されていた運命に導かれるままに旅に出る。


アブホーセンを継ぎたくない少年と先視の力を授からない少女の対比が、この年頃の情緒をうまく描き出している。どちらも自分探しの旅だが、前作の悲壮感、緊迫感を思えば、比較的軽いテンポで読みやすい。その分、前作ほどの視覚的美しさが少々失われたようなかんじがするが。
相変わらず魅力的なキャラクターを新しく登場させて、読者をうまくひきつけている。【サブリエル】はあれで一部完結といった終わり方であるが、【ライラエル】では「続く」という終わり方なのがちょっと嫌だ。古王国記シリーズは次作【アブホーセン】をもって完結としているが、今まだ刊行されてないのでしばらく続きはおあずけである。読者としては結構ストレスが溜まる。

総合評価★★★★☆(★5が最高)

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ライラエル/氷の迷宮
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by cafe_europa | 2004-05-01 03:08 | Fantsy

【裏庭】梨木香歩   

2004年 04月 29日

a0002942_17311.jpg裏庭  梨木香歩
昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた—教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。(「BOOK」データベースより)


幼い頃読んだフランシス・ホジソン・バーネットの【秘密の花園】を彷彿とさせる物語である。秘密の花園は心と体を病んだ少年と少女が出会い、親世代の心の傷も含めて再生し大人への成長をとげる物語であるが、【裏庭】も両親や祖母、庭番など、裏庭にまつわる受け継がれた心の痛みを抱え、裏庭に広がるファンタジーの世界で再生と成長を遂げるのである。
「王女」が失われ、一つ目竜の化石が解体され、世界の崩壊を告げる礼砲が鳴り響くファンタジーの世界を主人公の照美は旅をする。ひとつひとつの冒険のエピソードが興味深く、奥が深い。
貸衣装屋で自分にあった本当の服を探すシーンでは羽根つきの服を身に着け、気分よく飛翔した照美は
<すると急に空が、見知らぬ、よそよそしいもののように見えてきた。自分はこの場所のことを何もしらないのだ、と、突然不安になった。(中略)『私は、何にも、つながっていない!』そう気づいたとき、つま先から頭のてっぺんまで冷たく貫く恐怖がテルミィを襲った。ー降りなければ>(本文抜粋)
なんとか地上に降りて、改めて衣装選びをしなおした照美は「本当の自分の服」を選んだのだ。
この物語は少女照美を通して語られる「本当の自分」捜しの旅でもある。本当の自分をみつけ、自分や他の人のなまなましい傷を知り、世界の崩壊の音「礼砲」の真の意味を知る。

総合評価★★★★★(★5が最高)

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裏庭
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by cafe_europa | 2004-04-29 17:01 | Fantsy

【歌う石】O.R.メリング   

2004年 04月 28日

a0002942_11751.jpg【妖精王の月】のシリーズだが、前作と話の繋がりはない。自分のルーツを捜しにアイルランドへ出かけた孤児のケイは、山中で巨石のアーチをくぐって四氏族が対立する紀元前のアイルランドへ迷い込み、記憶をなくした少女と出会う。二人が助言を求めた「白き翁」フィンタン・トゥアン・マック・ケーレルがケイにかけた言葉が印象的だ。
「自分を助けるには、まず人を助けよ」
この言葉でケイと少女アエーンはトゥアハ・デ・ダナーン族のいにしえの四つの宝物「剣」「槍」「大釜」「歌う石」を求める旅に出る。

前作が原始の神話がモチーフで、今回は神代の最期の頃の戦争がモチーフになっていて、荒々しく人間くさくなっている。知らずに読んだ時も面白かったが、アイルランドの歴史とケルト神話の入門書を軽く読んでから読み直すとかなり奥が深くて面白い。

総合評価★★★★★(★5が最高)

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【妖精王の月】O.R.メリング

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歌う石
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by cafe_europa | 2004-04-28 01:18 | Fantsy

【サブリエル/冥界の扉】ガース・ニクス   

2004年 04月 25日

a0002942_132654.jpg大死霊に捉えられた父親を助け出すために、18歳のサブリエルは単身、古王国に乗り込んだ。冥界から蘇った死霊たちがはびこる古王国で彼女を待ち受けていた運命とは…。オーストラリア、米国で話題になったファンタジー。(「MARC」データベースより)

19世紀イギリスをモチーフにした普通の人の世界<アンセルスティエール>と魔法が存在する壁ひとつ隔てた<古王国>。ファンタジーとはいってもモチーフが死霊や冥界なので全体的にホラーに近い暗さがあるが、所々舞台や話が切り替わる驚くような明るさや輝きが感じられる。アブホーセンの館の様子はモノクロ世界が急にフルカラーになったような鮮やかさだ。物語のキーになる<チャーター魔法>も描かれ方も暗闇の中で輝く光のように印象的だ。

ともすれば重たくなりがちな内容であるが、登場人物のキャラクター性もうまくテンポにのせている。主人公のお供のモゲットは辛辣で辛口な猫で、この猫の皮肉がまた小気味よく面白い。しかし、この姿はチャーター魔法がかけられた首輪で拘束されたフリーマジックの化物なので一筋縄ではいかない。
主人公は卒業間近に控えた女子高の優秀な監督生で、キビキビと冒険を進めていく。父親が行方不明になって古王国に乗り込んでから自らの未熟さを学び、急速に大人になっていく。父親との最期の別れの場面は、あまりにも急いで死霊を鎮める者<アブホーセン>にならざるを得なかった主人公の悲しみがあり、切なくなる。

本書【サブリエル/冥界の扉】は古王国記三部作の一作目にあたり、現在二作目の【ライラエル/氷の迷宮・古王国記2】までが刊行されている。

総合評価★★★★☆(★5が最高)

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サブリエル/冥界の扉
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by cafe_europa | 2004-04-25 13:27 | Fantsy

【魔法の王国売ります!】テリー・ブルックス   

2004年 04月 10日

a0002942_223952.jpgタイトルが素晴らしい。文字通り「魔法の王国」が売りに出されているのである。お値段は100万ドル。しかも10日間のクーリングオフまでついている。主人公が広告を見つけたのは高級デパートのクリスマス・カタログだ。なんとも現実的なところが興味をひかれる。
魔法が衰退し、竜が闊歩し、人々はちりぢりになった滅びが近い妖精王国。現実逃避のため、また自分を生き直すために王権を買った中年弁護士は苦難を超えて世界を救うという、王道の筋書きになっている。
しかしこの苦難を前に、まず王には金がない。国民は誰も王を相手にしてくれない。王の魔法の守護者もその存在は消滅したかに思われており、王軍も王政も全てとっくの昔に瓦解している。王を補佐する者といえば魔法がほとんど成功しない魔法使いと、その魔法使いにより犬に姿を変えられてしまった宮廷書記、護衛も兼ねた宮廷料理長に宮廷使者、この使えるかどうかも微妙な4人だけ。協力者も味方も他にはいない。これが100万ドルの王の座である。

この広告を見つけてから買うまでの主人公の葛藤から始まって、主人公が世界のしくみや王の状況を理解する流れ、理想に則って決断した後の失敗もとても現実的でブルックス氏のユーモアがそこかしこに散りばめられている。
自分は王国を救える王にはなれないのではないかと葛藤しながらも意地を張ったり、やせがまんしたり、時には逃げだそうという気持ちをもてあましながらも、主人公の頑固でアウトローな性格で冒険を突き進む姿は小気味よさが感じられる。文字通り徒手空拳から始まる王様の冒険である。本書はシリーズ化しており、この現実的で一風変わったファンタジーが気に入った方にはこの後の物語も堪能して頂けるだろう。

<魔法の王国売ります
ランドオーヴァー  時間の霧を逃れた魔法と冒険の島。騎士と悪漢、竜と貴婦人、魔法使いと妖術師の故郷。剣と魔法が共存し、騎士道が真の勇者の生の指針となる世界。異世界のこの王国ではすべての夢がかなうのです。このすばらしい織り物に欠けている一本の糸はーそう、そこを治める王のあなた。夢の中に逃避して、生まれかわりましょう。
価格:百万ドル
個人面談・収入明細書要
詳細はローゼン本社ミークスまでお問いあわせください。>(本文抜粋)


こんな広告をみつけたらあなたはどうします?

総合評価★★★★☆(★5が最高)

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魔法の王国売ります!
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by cafe_europa | 2004-04-10 22:39 | Fantsy

【妖精王の月】O.R.メリング   

2004年 04月 04日

a0002942_0528.jpgそなたの答えがノーでも、彼女の答えはイエスだ。わたしは〈人質の墳墓〉から花嫁を連れていく。フィンダファーを寝袋もろともさらいあげると、妖精王は塚山から去った。タラの丘の〈人質の墳墓〉でキャンプした夜、別の世界にあこがれるいとこ、フィンダファーが妖精王にさらわれる。翌朝からグウェンのいとこを連れもどす旅がはじまる。妖精たちとの絶妙な出会いに助けられながら。だがケルトのフェアリーランドは、グウェンにとっても魅力ある世界だった。カナダの青少年がその年、一番おもしろかった本を選ぶルース・シュワッツ賞の1994年度受賞作。(「BOOK」データベースより)

16歳になるいとこ同士の二人の少女の夏休みは、ファンタジーを探しにいく旅行の予定だった。不思議な導きでタラの丘の<人質の墳墓>で夜を明かす。少女の一人は妖精王の花嫁として連れ去られ、残されたもう一人の少女はアイルランドを舞台に攫われたいとこを取り戻す旅に出る。
読む前から翻訳がとてもいいと評判は聞いていた。ケルト神話の予備知識がほとんどない読者でもストレスを感じさせずに物語へと入って行ける自然さだ。話の構成自体は古典的で、むしろ基本を押さえつつ物語の端々に見え隠れする気配りの繊細さに、メリング独特のオリジナリティーと充実感がある。
この手のファンタジー児童書ではめずらしく、主人公は少女である。そして物語は少女の視点で展開し、恋も女の子特有のロマンチックさで語られている。自分は太めで、男の子ウケする振る舞いもできないと思い込んでいた少女は、恋に落ちることであるがままの自分に目覚め成長していくが、この年頃特有の劇的さを生き生きと描いている。
メリングの物語では妖精の存在が現実の世界の上に重ねて置かれ、我々の生活の隙間にじつに自然に溶け込んでいる。物語に出てくる地名も全て現実の地図と照合するというから、アイルランドへゆけば自分ももしかすると妖精達に出会えるかもしれないとつい思ってしまう。この物語の魅力は舞台に描かれているケルト神話を生み出したアイルランドの土地柄の描き方もあるだろう。古典の著名なファンタジーといえば「アーサー王物語」だが、これもケルト神話を題材に書かれていることを思えば、ファンタジーを生み出す土壌としてアイルランドは今も在り続けているのだろうか。読み終わった後も、この国にはどこか生活の隙間で妖精が消えては現れる、そんな余韻が残る作品である。

総合評価★★★★★(★5が最高)

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妖精王の月

■参考
アイリッシュケルトの伝説
ケルトの文学
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by cafe_europa | 2004-04-04 00:51 | Fantsy

【琥珀の望遠鏡】フィリップ・ブルマン   

2004年 03月 08日

a0002942_05558.jpg羅針盤を頼りに旅を続けるライラとウィル。その旅は「死者の国」にまで及ぶ。ライラの担った役割とは? そして地上に楽園を求め、共和国建設を目指すアスリエル卿と「教会の権力」の闘いは? 傑作冒険ファンタジーの完結篇。 (「MARC」データベースより)

まとめると現代のキリスト教観の新定義みたいなかんじなんだろうか。たくさんの出会いがあり、別れがあり、終章では皆それぞれが属する次元の世界へ帰るのだが、その余韻がまたいい。しかし、子供が読んで理解するのはちょっとむつかしいかもしれない。逆に言えば大人もかなり楽しめるファンタジーではないだろうか。ハリ・ポタは正直まんがっぽくて巻が進むごとに読みづらくなってくるが、本作は圧巻。同じようなファンタジーでキリスト教ネタの【ネシャン・サーガ】が思い浮かぶが遥かに独創性に富み、イメージ豊かでよく調べこんであり、内容が段違いに濃い。確かに【指輪物語】や【ナルニア物語】と並ぶファンタジーの最高峰と賞されるの頷ける。

総合評価★★★★★(★5が最高)

■関連記事
【黄金の羅針盤】
【神秘の短剣】

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琥珀の望遠鏡
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by cafe_europa | 2004-03-08 00:55 | Fantsy

【神秘の短剣】フィリップ・ブルマン   

2004年 03月 08日

a0002942_04744.jpgオーロラの中に現われた「もうひとつの世界」に渡ったライラは、"スペクター"と呼ばれる化け物に襲われ、大人のいなくなった街で、別の世界からやって来た少年ウィルと出会う。父親を探しているウィルはこの街で、不思議な力を持つ"短剣"の守り手となる。空間を切りさき別世界への扉を開くことのできるこの短剣を手に入れた少年と、羅針盤を持つライラに課せられた使命とは…。気球乗りのリーや魔女たち、そして天使までも巻き込んで、物語はさらに大きく広がっていく—。世界中で大ベストセラー、カーネギー賞受賞の壮大で胸躍る冒険ファンタジーの傑作(「BOOK」データベースより)
三部作の第2巻。

短剣の守り人の少年が登場することで、物語はダークな面を見せ始める。殺人をおかした少年の細やかな人物描写には、とても子供向けとは侮れない内容。新しく登場したキャラクターの設定も、主人公ライラが本能的、貪欲で直感的であるなら、短剣の守り人として登場するウィルは理知的で良識家のキャラクターとして、今後の旅の広がりをうまく支えるパートナーとしてうまく配慮されている。前作の羅針盤が過去から未来までの知識を知りうる指針であるなら、本作の短剣は多元世界を切り開く神器なのだ。短剣が切り開く次の世界と更におこる事件、物語は収拾する気配を未だみせず、このあとの展開がまだ予測ができない。

総合評価★★★★★(★5が最高)

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【琥珀の望遠鏡】

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神秘の短剣
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by cafe_europa | 2004-03-08 00:47 | Fantsy