カテゴリ:History( 6 )   

【花神・全3巻】司馬遼太郎   

2004年 10月 16日

a0002942_17283649.jpg周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。(「BOOK」データベースより)

幕末の動乱を駆け抜けた実務家、大村益次郎の波乱の生涯。司馬遼太郎氏は数ある著書ごとに様々な切り口で幕末を描いているが、本書では「技術者」の角度で大村益次郎の合理的思考と長州の狂信熱との対比が鮮やかで、物語をより生き生きとさせている。
主人公は天性の無愛想で無口、福沢諭吉の若年に見せる才走った軽佻さとは一線を画した難物。宇和島藩、会津藩、幕府と彼の才知を見込んで引く手数多だったのを振り切って彼は故郷、長州藩へ身分を移すが、危機に瀕するまでの長州は彼に対して「雇士」の扱いを変えず冷淡であった。長州が京を追われ攘夷志士が都落ちする中、逃亡中の桂小五郎(後の木戸孝允)から相談をもちかけられ、主人公は桂から信頼されたことに胸をふるわせて感動するくだりは感慨深い。高杉晋作や久坂玄瑞ら藩の高官達の方がよほど桂と親交があったことを考えると、主人公の感動の熱はよほど高い温度であったに違いない。
それを転機に時勢は彼を歴史の舞台にひきあげ、軍務大臣として幕末に躍り出る。幕末風雲児の中では異色の人物像だが、司馬遼太郎氏だからこそ、ここまで描き出だせたのではないだろうか。
総合評価★★★★☆(★5が最高)

書籍情報
花神・上巻
花神・中巻
花神・下巻
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by cafe_europa | 2004-10-16 17:15 | History

【阿片戦争】陳舜臣   

2004年 07月 19日

a0002942_152847.jpg内に人心荒廃し、外に中華思想を振りかざす清朝末期。産業革命後の英国新興資本は、市場を求める中国進出を企ていた。“阿片を認めるか否か”——暴利と保身に詭計をめぐらす特権商人、官僚達の渦中に、国を憂う清廉潔白な実力官吏林則徐と豪商連維材がいた。近代中国黎明のうねりを活写する大河小説。

【阿片戦争】は滄海編、風雷編、天涯編からなる全三巻。
19世紀末、中国は列強に食い荒らされ、清王朝は阿片によって滅びようとしていた。「西欧と東アジアとの劇的な邂逅」とあとがきにも書かれているように、世界史的な事件を【阿片戦争】は緊張感をもって我々に伝える歴史小説だ。
豪商連維材と番頭の温翰が、厦門の「望潮山房」の一室から望遠鏡を覗きながらあるものを待っているところから物語は始まる。

<━━━━あの船がきた。
金門湾遥か彼方に船影らしいものが見える。イギリスのイースト・インディアマン型洋帆船である。
「新しい時代が来る」
不吉な予感に連維材は息を飲む。(本文抜粋)>

本書で生き生きと力強く描かれるのが、女性の登場人物達である。連維材の恋人、西玲も阿片のパイプをくゆらしながら、「退屈だわ」と口癖でつぶやく。自分の生きる道を探しあぐねて男達の間を遍歴し、戦乱の最中、イギリス兵の暴行に遭って混血児を産む。が、彼女も母となって初めて「生きる道」をみつけるのだ。
阿片戦争における「西欧との邂逅」は、彼女に象徴されているかもしれない。

総合評価★★★★☆(★5が最高)

■関連書籍
阿片戦争・上巻・滄海編
阿片戦争・中巻・風雷編
阿片戦争・下巻・天涯編
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by cafe_europa | 2004-07-19 15:30 | History

【チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷】塩野七生   

2004年 03月 14日

a0002942_22221.jpgルネサンス期、初めてイタリア統一の野望をいただいた一人の若者・・・父である法王アレッサンドロ六世の教会勢力を背景に、弟妹を利用し、妻方のフランス王ルイ十二世の全面的援助を受け、自分の王国を創立しようとする。熟練した戦略家たちもかなわなかった彼の"優雅なる冷酷"とは。<毒を盛る男>として歴史に名を残したマキアヴェリズムの体現者、チェーザレ・ボルジアの生涯(「BOOK」データベースより)

塩野氏の作品の中では【ローマ人の物語】と並ぶ面白さだ。なによりも氏の書く物語の人物像の描き出し方がとてもいい。群雄割拠の時代のイタリアを統一すべく現れた風雲児、チェーザレ・ボルジアの凄まじい生き方がクールな筆で輝きを増している。マキャヴェッリが理想とした君主の苦悩や獰猛な野望、短い一生を駆け抜けたその人物像はとても鮮やかだ。小説自体の魅力もさながら、筆者の腕のすばらしさを文章を辿りながら肌に感じる。
「最高の精神と度胸を持った女」カテリーナ・スフォルツァとの対決や、天才レオナルド・ダ・ヴィンチとの邂逅、マキャヴェッリがいかに理想の君主像を腹の中にあたためていったか、ルネッサンスならではの小説である。

総合評価★★★★★(★5が最高)

■書籍情報
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷
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by cafe_europa | 2004-03-14 22:20 | History

【竜馬がゆく・全8巻】司馬遼太郎   

2004年 03月 01日

a0002942_154114.jpg「薩長連合、大政奉還、あれァ、ぜんぶ竜馬一人がやったことさ」と、勝海舟はいった。坂本竜馬は幕末維新史上の奇蹟といわれる。かれは土佐の郷士の次男坊にすぎず、しかも浪人の身でありながらこの大動乱期に卓抜した仕事をなしえた。竜馬の劇的な生涯を中心に、同じ時代をひたむきに生きた若者たちを描く長篇小説。
(「BOOK」データベースより)


竜馬の暗殺の黒幕については現在も決定打がないという歴史の認識だが、それでも当時の混乱ぶりをよく伝えていて、小説の良さを最大限に生かしている。やっぱり惜しい人を亡くしてしまったんだなあとしみじみ思った。時々日本史には、日本人では本来生まれてこないだろう人物が突如現れる。それが日本史の面白さだと思うが、竜馬もその一人だ。当時の文化、風土ではあり得ない存在で、だからこその歴史の大仕事なのだろうなと考える。
司馬氏の作品は、読者個人の自由な想像を許した文体が特徴にあげられる。かといって作家が読者をつきはなすでもなく、氏の竜馬へのあたたかい愛と憧れがよく伝わってくる。
この素晴らしい大作の為に、その後坂本竜馬の大作の小説はほとんど出なかったが、近年出版されて注目されるのが津本陽の【竜馬】。話にきくところによると、津本氏も司馬氏の作品をかなり意識して手がけたらしい。近々その出来映えを堪能してみたいところである。

総合評価★★★★★ (★5つが最高)

■関連記事
【新撰組血風録】【燃えよ剣・上下巻】
【街道を行く5・モンゴル紀行】

■書籍情報
竜馬が行く
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by cafe_europa | 2004-03-01 01:26 | History

【新撰組血風録】【燃えよ剣・上下巻】司馬遼太郎   

2004年 03月 01日

a0002942_15445.jpg大河ドラマ狙いで新撰組の話をふたつ。
特に新撰組の沖田総司のイメージというのは、氏が最初に作り上げたというのは有名な話。正直あまり新撰組自体は好きな人物像ではないのだが、幕末の英雄がリンクしてくるのでやっぱり楽しい。同時進行で竜馬も読んでいるから、司馬ファンとしてはちょっと幸せを感じてみたり。

総合評価★★★★☆(★5つが最高)

■関連記事
【竜馬がゆく全8巻】
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■書籍情報
新撰組血風録
燃えよ剣・上巻
燃えよ剣・下巻
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by cafe_europa | 2004-03-01 01:22 | History

【桃源郷 上下巻】陳舜臣   

2004年 02月 08日

a0002942_1670.jpg時は12世紀。僚(カラ・キタイ)の皇族、耶律大石が自国の滅亡を予感し、主人公の青年、陶羽を西に派遣することから物語は始まる。マニ教弾圧の中、西に僚を、マニ教を生かす道を探るために仲間は増え、一行はイスラム教シーア派の暗殺集団の集落アラムートへと辿り着き…

陳舜臣の作品としては、異色の分類に入るのではないだろうか。物語としては歴史小説になるが、物語の下地にマニ教が敷かれており、本当の宗教とはなにか、真理とはなにかと常に問いかけている。
「…わしは仏教じゃ、わしはイスラムじゃ、いやキリストじゃと、これも大声でなくつぶやいている間に、その名を捨てるのが理想ではあるまいか」(本文抜粋)
主人公の仲間も職業、国籍、宗教も様々だ。生い立ちもなにもかも違う彼等は旅のなかでマニ教という共通項を得て、最後は「マニ教」という名前を捨てるに至る。宗教対立が現在も続く中、この物語が扱うテーマは現代にも通じるものである。

とはいえ、歴史小説と思って読むひとにはちょっとつらい内容かもしれない。どちらかといえば宗教小説に近い。
題材としては非常に興味をそそられるが、色んな要素を詰め込みすぎた感じがする。それでもきちんとまとめられているのは陳舜臣氏の力量のすばらしさだろう。

総合評価★★☆☆☆(★5個が最高)

■書籍情報
桃源郷/西遷編・上巻
桃源郷/東帰編・下巻
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by cafe_europa | 2004-02-08 17:31 | History