マッチ売りの老婆   

2006年 05月 25日

帰り道、日没直後のナゴヤドームの脇の信号で停車した。
野球シーズンは、この通りは近所の駐車場の客引きの誘導灯が、風に吹かれた提灯のように揺れている。・・・と書くと夏の風物詩ぽくて風情があるが、実際はかなりエネルギッシュでギラギラである。
何気なく交差点の脇に目をやると、ちっこくてしわしわの老婆が、だらりと自転車にもたれかかり、疲れ果ててしょぼくれ目はうつろ、力なく誘導灯を振っている。
まるでマッチ売りの少女ならぬ、マッチ売りの老婆である。

エネルギッシュできっつい嫁は家で、この時間帯だからきっと夕飯の支度中。
「こっちは家事でやることいっぱいあって忙しいんだから、オカーサン、少しは何か手伝ってよ!」
みたいな勢いでまくしたてられて誘導灯を持たされ、駐車場にお客さんを連れてくるまでは帰らせてもらえない物語を想像してしまう。

・・・と、その瞬間、目が合ってしまった。
「あ」と思ったときにはもう遅い。
目が合うなり、花がほころぶようにみるみると満面の笑みになり、ちっちゃな目にはスパンコールが埋め込まれてるのか、お星様きらきらである。
交差点先頭で信号停車している私に、体イッパイ使って、左折するように一生懸命誘導する。横断歩道を渡っている会社員が私とオバーチャンを見比べ、「え。赤信号で左折するの?」的に、一瞬立ち止まる。
いや、私は直進してうちに帰りたいんですけどね。
信号が変わりそうなタイミングになると、死を覚悟した求愛のダンスを思わせる異様な舞を始めた様子が、ナニカ不気味で非常にコワイ。そのうち、老婆の細くてちっこい体がポッキリ折れて、天寿を全うしてしまうのではないか。
ああ、早く信号変わって頂戴。

そして、ついに信号が青に変わった。
必死の形相の婆から目がそらせず・・・、誘導されるままに駐車料金1500円を老婆の右手に握らせている私がいた。

・・・隣のイオンでお夕飯の食材でも買ってくるか(泣
あのオバーチャンはうちに帰って、必死の稼ぎをきっついヨメに奪い去られるのかな。それとも、今夜のオバーチャンのおかずが1品増えるのかな。

しかし、これだからお年寄りと子供と動物は嫌いだ。
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by cafe_europa | 2006-05-25 22:06 | think

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