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【骨董市で家を買うーハットリ邸古民家新築プロジェクト】服部真澄   

2004年 06月 13日

【骨董市で家を買うーハットリ邸古民家新築プロジェクト】服部真澄_a0002942_164912.jpgなんと 【バカラ】【龍の契り】の服部真澄氏の家作り奔走記だ。
「骨董市で家を買おうと思うの」
ある日、「掘り出し物」に弱いカミさんに連れられて、作家の夫は東京古民具骨董市へ古民家を買いにでかける。

骨董市の一角で「民家の販売・移築いたします」と大書きされた札をつるした「ひなた美術」。氏はここで北陸の民家を買い、東京の一角へ移築工事を始めるのだ。
遅れる工期、足りない材料、折角ならあれもやろうこれもやろうと膨れる予算を前に、自分たちの「最高の住み心地の家」を求めて奔走する氏の筆遣いが楽しい気分にさせてくれる。家が完成した直後は満足しつつも、屋根のこう配と部屋の仕切りのために二階の風通しが悪くてかなり暑いなどと「ああしておけばおかった」と後悔しているのが面白い。

読み進めてふと気づく。主人公は一人称である作家の夫の「ぼく」、配偶者は「カミさん」。

しかし服部真澄は女性ではなかっただろうか。

著者近影も見た事があるから、女性であることはまちがいがない。本書はエッセイかと思いきや、エッセイにフィクションで視点を切り替えた「小説」なのである。一人称で筆を進めながらも、冷静な観察もうかがえる文章であるが、【龍の契り】で直木賞候補、【鷲の驕り】吉川英治文学新人賞受賞の氏の理知的で、迫力のあるクールな文章が本書では軽快でもの柔らかい筆致で、はじめは同じペンネームの別人と思って購入していたのだ、実は。
最期のシメの一文で、書斎の向こうにいる妻が夫の言い訳をしている。
「どうにもこうにも、居心地がよすぎまして、ええ。こんどの家では、なかなか、原稿が捗らないんですよぅ…」

これはどう考えても本人の言い訳なんじゃないだろうか。



総合評価★★★☆☆(★5が最高)

■参考
古民家再生日記
信州の古民家再生・移築を行う(株)鮫島のblog
カール・ベンクス & アソシエイト
日本の古民家を愛するドイツ人建築家のHP
日本民家再生リサイクル協会
古民家を保存・再生するNPO団体のHP

■書籍情報
骨董市で家を買うーハットリ邸古民家新築プロジェクト

by cafe_europa | 2004-06-13 16:50 | other books

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