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【レイチェルと滅びの呪文】クリフ・マクニッシュ   

2004年 02月 09日

【レイチェルと滅びの呪文】クリフ・マクニッシュ_a0002942_16242.jpg遠い昔、追放された邪悪な魔女が支配する星、イスレア。ここでは原生の生物は絶え、魔女の作り出した生き物とさらわれた子供達しか存在せず、降る雪の色さえも魔女の与えた灰色を纏っている。主人公レイチェルと弟は家の地下室の壁から現れた巨大な黒い手によって、イスレアへ吸い込まれる。イスレアでは魔女ドラヴェナが、自らの後継者を待っていた。後継者の手を借りて魔女の為の檻、イスレアを脱出し、地球に帰還して復讐を果たす為に。そしてイスレアには伝説の詩があった。奇跡の子が地球よりやってきて、さらわれた人々を解放するという・・・
レイチェル3部作・第1部


法の設定というか、表現の仕方に個性がある。1部では魔法は洗脳に焦点が置かれており、ハリ・ポタやその他の魔法とは一線を画している。しかもその魔法はイスレアにあって始めて顕現されるように物語に制限がかかっている。
著者が愛娘の「悪い魔法使いが出てくるお話」というリクエストで語るうちに出来た話というが、本の帯のコピーにもあるように、児童書としてはかなりグロテスクな表現もあり、大人が読むには物足りないが、子供も楽しめるかはちょっと微妙。ちょっと趣向を変えた児童書を読みたい人には、いいかもしれない。

総合評価★★☆☆☆(★5個が最高)

■書籍情報
レイチェルと滅びの呪文

# by cafe_europa | 2004-02-09 09:27 | Children's books

【バーティミアス/サマルカンドの秘宝】ジョナサン・スラウド   

2004年 02月 08日

【バーティミアス/サマルカンドの秘宝】ジョナサン・スラウド_a0002942_16516.jpg舞台は英国ロンドン。上流階級の魔術師と、庶民の魔法を使えない「一般人」が住む世界。魔術師は貧しい一般人から弟子をとり、子供達は幼い頃から親も自らの名も捨て、帝国貢献の為に魔術の修得に勤しんでいる。
魔法使い見習いのナサニエルは、負けず嫌いでプライドの高い少年。ある日、少年は師匠に隠れて、上級ではないがベテランの妖霊(ジン)バーティミアスを召還。目的は自分に恥辱を与えた、エリート魔術師サイモン・ラブレースが密かに所持する、サマルカンドのアミュレットを盗むこと。盗みに成功した後、ナサニエルとバーティミアスは、アミュレットの出所を調べる内に師匠は殺害され、大事件へと発展していく。
3部作の内の第1部。


目を引くのが、主人公ナサニエルと妖霊バーティミアスの対比。無鉄砲で野心家、プライドの高さが鼻につく少年と、シニカルだがどこか憎めない、5000歳を越えるベテラン妖霊のやりとりが物語に躍動感を与えている。
物語は何度か視点を切り替えているが、時々バーティミアスの視点で読者に語りかけており、召還されて渋々つきあいつつも、どこかナサニエルを気に入りつつある様子が伝わって面白い。文中にある注釈も、全て登場人物バーティミアスの注釈によるもので、物語に入り込みやすくなっている。

映画化が決定し、ハリー・ポッターの対抗馬と言われているようだが、少々疑問。魔法使い見習いの成長という点は確かに共通項だが、物語の種類自体が違うといおうか。ハリー・ポッターも好きだが、あえて言えばハリー・ポッターが肌に合わなかった人に読んで欲しい本。

総合評価★★★★☆(★5個が最高)

■書籍情報
バーティミアス/サマルカンドの秘宝

# by cafe_europa | 2004-02-08 17:33 | Children's books

【桃源郷 上下巻】陳舜臣   

2004年 02月 08日

【桃源郷 上下巻】陳舜臣_a0002942_1670.jpg時は12世紀。僚(カラ・キタイ)の皇族、耶律大石が自国の滅亡を予感し、主人公の青年、陶羽を西に派遣することから物語は始まる。マニ教弾圧の中、西に僚を、マニ教を生かす道を探るために仲間は増え、一行はイスラム教シーア派の暗殺集団の集落アラムートへと辿り着き…

陳舜臣の作品としては、異色の分類に入るのではないだろうか。物語としては歴史小説になるが、物語の下地にマニ教が敷かれており、本当の宗教とはなにか、真理とはなにかと常に問いかけている。
「…わしは仏教じゃ、わしはイスラムじゃ、いやキリストじゃと、これも大声でなくつぶやいている間に、その名を捨てるのが理想ではあるまいか」(本文抜粋)
主人公の仲間も職業、国籍、宗教も様々だ。生い立ちもなにもかも違う彼等は旅のなかでマニ教という共通項を得て、最後は「マニ教」という名前を捨てるに至る。宗教対立が現在も続く中、この物語が扱うテーマは現代にも通じるものである。

とはいえ、歴史小説と思って読むひとにはちょっとつらい内容かもしれない。どちらかといえば宗教小説に近い。
題材としては非常に興味をそそられるが、色んな要素を詰め込みすぎた感じがする。それでもきちんとまとめられているのは陳舜臣氏の力量のすばらしさだろう。

総合評価★★☆☆☆(★5個が最高)

■書籍情報
桃源郷/西遷編・上巻
桃源郷/東帰編・下巻

# by cafe_europa | 2004-02-08 17:31 | History

【クリスマスを贈ります】ウィリアム・ウォートン   

2004年 02月 08日

【クリスマスを贈ります】ウィリアム・ウォートン_a0002942_161818.jpg時は第二次世界大戦。

無人の少年兵達が占拠した無人の城、そこで出会ったドイツ兵との出来事。対峙した彼らは警戒し、その日がたまたまクリスマス当日ということで、天の気まぐれのような触れ合いがあり、そして恐怖と死があった。

…「敵性情交」という言葉がドイツ人に対する無用な同情を戒める為に流行した。(中略)私達は何も情を通じた訳ではない。実際にあったことから言うと、仲間づきあいをしたのである。あの夜、私達は敵と肩を組んだと言うべきだろう(本文抜粋)

人間の行いの中で最も救われないのが同族殺し、いわゆる戦争ではないかと考えさせる内容。敵であれ相手も人間で、戦争を始めたのも偉い上の人で、戦争して人を殺し、殺される兵士達ではないということ。人としての心の弱さ、迷い、殺し殺される不安と恐怖。
その中でのクリスマスの出来事が、悲しくなる程美しい奇跡のように、物語の中で綺羅星の如く光を放っている。秀逸な作品。

総合評価★★★★★(★5個が最高)

■書籍情報
クリスマスを贈ります

# by cafe_europa | 2004-02-08 17:26 | novels

【ドラゴンランス戦記・全6巻】M.ワイス T.ヒックマン   

2004年 02月 08日

【ドラゴンランス戦記・全6巻】M.ワイス T.ヒックマン_a0002942_162335.jpg5年前<まことの神々>のしるしを求めて、それぞれの旅に出た7人の仲間。再会したのは6人。そして運命の輪が回り始める。約束の場所、故郷の地は狂信者に支配され、追われた彼らは冒険の旅にでる。天空では<暗黒の女王>と<雄々しき戦士>の星座が消えた。暗黒の女王が復活し、また戦士も女王と戦うために地に降りるという。各地では邪竜が復活し、人々はドラゴン軍の前になすすべもなく蹂躙され、支配される・・・

すでに絶版されて久しかったが、近頃ファンタジーブームにあやかり、以前は文庫だったのが、なんとハードカバーで復刊する予定だとか(ちなみに同シリーズの新しい話の方から復刊されているので、復刊の順番が話の順番とあってない)。復刊後、全巻揃えるとなるとかなりのお値段になるのではなかろうか。
ちょっとクセのある話だったが、それもそのはず。テーブルRPG(すごろくのようなもの…であながち間違っていないと思う)が原作の小説なので、構成が言われてみればゲーム風だが、内容は濃い。パーティのはじめはハーフエルフ、ドワーフ、バーフット(小人族)、魔法使い、騎士、戦士。話が進むにつれて他のキャラクターも仲間になり、死んでいく。
内容自体も意外にしっかりとしていて、わりと濃い。海外もののせいなのか、ゲーム原作のせいなのか、キャラクターが非常にクセがあり、仲間内で反目しあっていたりして落ち着きがない。そのクセが入り込みづらいのでもあるが、ストーリーに一層の幅を持たせている。
ファンタジーとはいっても、児童文学主体で読んでばかりいる身としては少々新鮮。

総合評価★★★★☆(★5個が最高)
【ドラゴンランス伝説・全6巻】
【ドラゴンランス・セカンドジェネレーション上下巻】

【書籍情報】
M.ワイス T.ヒックマン著
出版社◆富士見書房(現在は絶版) 分類◆文庫

# by cafe_europa | 2004-02-08 17:24 | Fantsy